AIによる相続税調査の導入(2025年夏~)調査拡大の懸念
国税庁は2025年夏から、相続税の税務調査に人工知能(AI)を本格導入すると発表しました。今回、気になるその内容について取り上げます。
▼相続税調査にAIを本格導入
2025年夏から、国税庁は相続税の税務調査にAI(人工知能)を導入します。
相続税の申告書や財産債務調書、海外送金、保険金、金地金、不動産取引などの情報をAIが分析し、過去の申告漏れパターンをもとに、調査対象のリスクを0~1のスコアで数値化します。
スコアが高いケースは、優先的に調査対象となります。調査の精度向上と人手の効率化が目的ですが、これまで経験に頼っていた部分がデータ分析に置き換わる点は大きな転換です。

▼調査対象の拡大と不動産資産への影響
AIによる判定精度の向上により、これまで調査対象外だった中規模資産にも調査の目が向けられる可能性があります。
特に、相続財産が5000万円を超えるケースや、複数の不動産や共有名義資産を所有している方は注意が必要です。
現金の不自然な引き出しや名義預金の存在などが、AIによって「高リスク」と判断されることもあります。不動産オーナーは、所有資産の名義確認や財産の流れを整理し、見落としがないようにしておく必要があります。
近年相続税の追徴税額は増加傾向にあり、国税当局の積極性が見て取れ、注意が必要です。

▼調査対象の拡大▼納税者に求められる備え
AIによる分析は個別の事情を考慮しないため、問題がない取引でも「異常値」として検出される場合があります。そのため、取引の背景や意図、使途などを説明できるように証拠資料を整えておくことが不可欠です。
海外資産や仮想通貨、企業出資などの情報も今後の分析対象になる可能性があるため、資産全体の可視化と管理が求められます。
相続は突然訪れます。平時からの備えとして、税理士など専門家と連携し、信頼される相続対策を進めましょう。
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