遺言書にまつわる注意点やトラブル ④遺言書を絶対に作るべき人・その1
▼遺言書を絶対に作るべき人
遺言書を絶対に作るべき人“その1”は、子供がいない人です。
配偶者は必ず法定相続人になりますが、子供がいれば子供と配偶者が法定相続人となります。子供が既に死亡していても孫がいれば、孫が子供の相続人としての地位を代襲して相続人となります。
また、子や孫が既に死亡していても曾孫がいれば曾孫が相続人としての地位を代襲する、というように直系卑属は6代まで代襲することができます。
しかし、子供がいなければ、親が既に死亡していても祖父母が生存していれば、祖父母が相続人になります。なお、子や孫等の直系卑属は代襲相続することができますが、親や祖父母等の直系尊属は代襲相続することはできません。
つまり、長男と死亡した長女の子がいるときは、長男と死亡した長女の子が対等な立場で相続人となりますが、父と死亡した母の両親がいるときは、父のみが相続人となります。

問題は、直系卑属や直系尊属がいない場合です。この場合は兄弟姉妹と配偶者が相続人になり、死亡した兄弟姉妹に子がいるときは、その子=甥姪が相続人としての地位を代襲します。
遺言書がないと、あなたの兄弟姉妹が、既に死亡していて甥姪がいれば、甥姪と生存している兄弟姉妹の全員と配偶者とで遺産分割協議を必ずしなければならないとなります。遺産分割協議は全員一致でなければ成立させることができないため、兄弟姉妹(及び兄弟姉妹を代襲した甥姪)の誰か一人でも反対すれば、残された配偶者は家庭裁判所に調停や審判の申立てをしなければならず、大変な負担をかけることになります
▼遺言書の有効性と効果
先の場合、全ての遺産を配偶者に相続させる旨の遺言書があれば、兄弟姉妹(及び兄弟姉妹を代襲した甥姪)を相続手続から排除することができます。
兄弟姉妹を除く法定相続人には「遺留分」があります。遺留分とは遺言によっても侵害できない法定相続分のことであり、遺言によって遺留分を侵害された法定相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。しかし、兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書があれば、兄弟姉妹(及び兄弟姉妹を代襲した甥姪)に対し、相続財産を一切与えないようにすることができます。
これに対し、直系卑属や直系尊属には遺留分があるため、遺留分を侵害しないように配慮した遺言書にしたほうが死後の紛争(遺留分を侵害された相続人による遺留分侵害額請求。話し合いがまとまらなければ、最終的には訴訟になります)を避けることができます。
このように、甥姪が法定相続人であるときに遺言書がなければ、配偶者に大変な負担をかけることになるため、遺言書は絶対に作っておくべきです。
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