孤独死数、年8.7万人の衝撃 リスク回避方法は?

 今、孤独死が深刻な社会問題になりつつあります。政府は2023年に孤独死・孤立死の実態を把握するためのワーキンググループを立ち上げて議論を開始しています。

 実際に孤独死で亡くなる人は、どれくらいいるのでしょうか。日本経済新聞が警察庁に取材したところ、2024年1〜3月の間に自宅で亡くなった一人暮らしの人数は、全国で2万1716人(暫定値)でした。この孤独死数を年間に換算すると、約8万7000人の一人暮らしの人が自宅で亡くなっていることになります。

 自宅で亡くなった一人暮らしの78%が65歳以上ですが(約6万8000人)、一方で65歳未満の人が相当数いることも見逃せません。年間に換算すると、約1万9000人の若者や中年の人々が孤独死をしている計算になります。

 賃貸経営における孤独死リスクは、入居者が高齢者の場合に起きやすいイメージがあります。しかし、先述の警察庁のデータを踏まえると、若者や中年の入居者においても、孤独死のリスクが存在することを賃貸オーナー様は認識する必要があります。

 賃貸オーナー様がこのテーマで最も気になるのは、所有物件で孤独死が発生した場合、「どれくらいの損失が生じるのか」ではないでしょうか。

 孤独死による損失については、物件のタイプや賃料、死から発見までの期間などによって異なりますが、保険会社のデータなどを参考にすると、一般的な損失は約150万円(うち、家賃損失は50万円)と考えられます。

 その内訳を確認してみましょう。孤独死が発生した場合にオーナー様が負担する、主な費用の項目は以下の3点です。
・原状回復費
・遺品整理のための費用
・相続財産管理人の選任申立費用

 これらの中で、最も多額の費用がかかるのは原状回復費です。特殊清掃の費用は状況や業者によって大きく異なり、目安は5〜50万円程度です。亡くなった箇所に汚れや臭いが残っている場合、床材やクロス、襖、ドアなどの交換も必要となります。

 家賃の損失も物件によって異なりますが、仮に家賃を8万円、空室期間を6カ月と想定した場合、損失は48万円となります。

 孤独死の数が増えていることや、孤独死によるオーナー様の負担が大きいことを考慮すると、「明日、孤独死が発生してもおかしくない」という意識を持って、孤独死リスクと真剣に向き合っていく必要があります。

 原状回復費や遺品整理費用の請求先は、原則として連帯保証人になります。また、連帯保証人がいない場合は、ご家族(相続人)に相談することになります。

 しかし、賃貸借契約を交わす際に確認していた、連帯保証人やご家族の電話にいざ連絡してみると、繋がらないこともあります。

 問題が起きたときに困らないよう、連帯保証人やご家族に定期的に連絡することをおすすめします。例えば、長期的な入居の場合、賃貸借契約の更新時に必ず連絡するなどです。

 孤独死が発生した場合、発見されるまでの期間でご遺体の状態が大きく変わります。発見までの期間が長いほど、特殊清掃費や原状回復費が増加しやすく、入居者募集を行った際の心理的な抵抗感も強まります。

 賃貸オーナー様が孤独死を早期に発見する方法の一つは、家賃滞納に対するスピーディーな対応です。

 また、他の入居者や周辺住民から「悪臭がする」などの苦情があった場合、速やかに現地調査を行い、原因を特定することも有効です。

 ただし、家賃滞納や悪臭への迅速な対応をオーナー様だけで行うのは限界があります。管理会社と連携しながら、チームで孤独死リスクに対応するのが現実的です。まずは、管理会社の孤独死への考え方をヒアリングしてみましょう。その上で、オーナー様が気づいた点があれば、対応策について修正・追加していくのがよいでしょう。

 入居者が高齢者の場合、孤独死を防止するための「見守りサービス」を提案・導入するのも有効です。

 ただし、見守りサービスにはいくつかのタイプがあるため、物件や入居者のタイプに合った内容を選ぶことが重要です。

 見守りサービスの例では、ALSOKやセコムなどのセキュリティ会社が専用機器と緊急時のガードマンの訪問を組み合わせたサービスを提供しています。また、クロネコヤマトでは室内に特殊な電球を設置してオン・オフで異常を検知するサービス、郵便局員では月1回の訪問とご家族への報告を組み合わせたサービスを展開しています。

 見守りサービスのコストの一例として、クロネコヤマトの電球式の場合、初期費用と追加費用なしで月額1078円(税込/2024年8月末時点)の設定です。

 また、見守りプランが付いている保証会社もございますが、契約する方の初回保証料が高くなる(50%➡80%、100%等)傾向にあります。そのため、取り扱いをしていない不動産業者もあるため、オーナー様へ入居希望者の連絡があった場合に、見守りプランや死亡時の保証内容を相談することもリスク回避のひとつになります。

 火災保険の中には、孤独死の原状回復費や家賃減額に対応する商品もあります。

 例えば、損保ジャパンの火災保険「THE すまいの保険」では、事故の区分で「不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)」が適用される場合、孤独死の原状回復費が補償される可能性があります。

 なお、「THE すまいの保険」では、孤独死による損失リスクに対応する賃貸オーナー様向けの特約として「事故対応等家主費用特約」も用意しています。これは孤独死が発生した際の空室や家賃減額による損失、原状回復費を補償する内容です。

 他の保険会社の商品でも、同様の補償を用意している可能性がありますので、代理店や担当者に確認してみましょう。

 火災保険の特約などで孤独死による損失が補償されていない場合、「孤独死保険」に加入することでリスクを回避できます。

 孤独死保険の例として、住友生命グループのアイアルが提供する「無縁社会のお守り」があります。この商品の加入条件は、一棟物件または4戸以上の物件です。

 補償内容は、原状回復費(事故発生から180日以内に支払ったもの)、本来家賃の80%(最長12カ月)、および事故見舞金(1事故あたり5万円)です。

 ハウスウェルでは、万が一の場合を考え保証内容の充実している保証会社をご紹介しております。

◇賃借人死亡時、室内残置の動産処分費用(実費を保証)

◇賃借人死亡時、原状回復費用(上限あり)

撤去月までに賃料相当額(月額保証対象額の24ヵ月に含む)

 オーナー様ご自身で家賃管理等を行っている方は、募集をお願いしている不動産会社と万が一の場合を考えた保険加入の案内や保証会社加入依頼等のご相談をお勧めします。

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